11月の読書メーター
読んだ本の数:10冊
コウモリの見た夢パキスタンのラホールという街で、アメリカ人とおぼしき相手に、9.11をはさんだ時期の自らのアメリカ生活を語る主人公(パキスタン人)。語られる内容は哀切で、聞き手がどんな人物かまったく描かれないところが不穏さを醸し出している。印パの紛争がテロとの戦いの文脈で語られるのは目からウロコ。映画化されるとのこと。
読了日:11月30日 著者:
モーシン ハミッド
デカルトの骨 死後の伝記デカルトの骨を手がかりに、デカルト死後の思想、学問、歴史、とりわけ人間を概観したノンフィクション。大切なのは、複雑性に耐え、断層に身をおき、そこに踏みとどまることなのだなとの思いを強くした。
読了日:11月29日 著者:
ラッセル・ショート
ターミナルライフ 終末期の風景すばらしく読み応えがある。死ではなく終末期という着想が何よりまず新鮮な上に、著者の読みは深く、小説はまさしくこのように「開かれている」のだとあらためて驚きを禁じ得ない。カフカの作品を論じたいくつか、特に『変身』については圧倒的。終末期を「生きる」ひとりの人間について論じるだけでなく、社会や歴史、文化といったものにも思いを馳せさせずにいない深度をもった文学論集である。カフカの他に、カミュ、プルースト、ナボコフ、ベケット、クッツェーら11人の作品が取り上げられている。I.B.シンガーの未訳作品を読んでみたい。
読了日:11月24日 著者:
西 成彦
物の時代・小さなバイク (1978年) (新しい世界の文学〈81〉)「物の時代」はエピグラフにラウリーを引き、マルクスからの引用で終わっている、ペレックにしてはまじめな(?)作品で、訳者あとがきに書かれている通り、時制(この翻訳でも意識して読むと微妙な違いがわかるように思う)と、心情がまったく描かれないことが印象的だ。それらが独特なリズムを与えている。「物の時代」が文章重視だとするなら、一方の「小さなバイク」は言葉遊びが中心だ。例えば登場人物のひとりである「カラ某」は一度として同じ名前で呼ばれることがない。やっぱりペレックはあれこれ試してみてたんだなとわかって楽しい1冊。
読了日:11月22日 著者:
ジョルジュ・ペレック
慈しみの女神たち 上読了日:11月21日 著者:
ジョナサン リテル
小説のストラテジー本を読んでいて感じていたことを言葉にしてくれているところと、目からウロコのところと。佐藤亜紀さんがtwitterをやってらっしゃるときにおっしゃっていたことがこれを読んであらためて腑に落ちたりと、読んでよかった。蛇足: ミーメーシスはディドロの方かと思っていたら、そのままプラトンからだったのね。
読了日:11月15日 著者:
佐藤 亜紀
不安―ペナルティキックを受けるゴールキーパーの… (1971年)行動と観察を単調に記録しただけのような文章、パラグラフが変わるとまったく何の説明もないまま飛躍したかのように変化する行動。主人公はおろか、登場人物の心情がまったく語られないこと。つまりは躓かされてばかりの読みづらい作品なのだが、それらによって読み手もまた「不安」というか、ある種の心許なさを感じる。俳優がまったく無表情に演じるアリ・カウリスマキ監督の「過去のない男」を思い起こした。
読了日:11月12日 著者:
ペーター・ハントケ
尼僧とキューピッドの弓 (100周年書き下ろし)読了日:11月06日 著者:
多和田 葉子
メモリー・ウォール (新潮クレスト・ブックス)「毎日世界は作りかえられる。」
読了日:11月05日 著者:
アンソニー ドーア
世界文学全集〈第56〉ブロッホ (1967年)誘惑者思索的な自然描写と、読者が期待するようには誘惑者と誘惑される者を二項対立では描かないところが印象に残った。1953年発行の小説だが、テーマはきわめて現代的であり、不安や不満が優勢な時代には心にとめておくべき作品だと思う。翻訳も流麗。
読了日:11月04日 著者:
--------------------------------------------------