Trois Mondes / 2012 / フランス・モルドヴァ
苦労して出世した自動車ディーラーの主人公アルは、10日後に社長令嬢との結婚を控えている。ところが、ある夜、仲間たちとついはめを外してしまい、深夜の街で男を車ではねてしまう。動揺したアルは現場から逃げるが、その一部始終を窓からジュリエットが目撃していた...
言われているようなサスペンスではないが、設定は事故しかありえなかっただろう。というのも事故であれば、否応無く社会のさまざまな階層の人びとが関わらざるを得ないからだ。原題は「三つの世界」。主人公のアルは労働者階級の出身であり、お金があるとはいえ、自動車ディーラーの社長も労働者階級からの叩き上げで、裏稼業にも手を染めている。一方、被害者はモルドヴァからの移民で、不法労働に従事している。目撃者のジュリエットが所属するのはインテリ・エリート階層だ(ちなみにジュリエットの恋人は大学で哲学を教えているが、これには学位を持っているだけではだめで、アグレガシオンという資格試験に合格している必要がある)。それぞれに事情があり、夢があり、悩みがあり、守りたいものがある。そうしたものを丁寧に描く。フランス社会を切り取ったドラマなのだろう。3人はこの後どんな道を歩むのだろう?
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