După dealuri / 2012 / ルーマニア
ルーマニアの丘の上の修道院で静かにヴォイキツァの元に、ドイツでしばらく暮らしていた孤児院での幼なじみのアリーナが訪ねてくる。アリーナは一緒にドイツに行こうと誘うが、ヴォイキツァに修道院を離れる考えはなかった。そして....
淡々と描いているのに、いろいろと壮絶だった。
修道院のシーンだけ観てると時代がわかんなくなっちゃうけど、まぎれもなく現代の話。至る所にルーマニアの貧しさが映し込まれている。そんな中で生まれ、孤児として育ったふたり。ひとりは神を拠り所として選び、もうひとりはおそらく夢破れてドイツから帰郷する。しかもアリーナの方にはヴォイキツァに親友として以上の感情がある。アリーナにはヴォイキツァの信仰が理解できず、強制されて、あるいは恐怖から修道院にとどまっていると思っているらしく、彼女を世俗の暮らしに取り戻そうとする。ここまでがおおよそ前半。その後、精神のバランスを崩し始めたアリーナが修道院にとって厄介な存在となっていき、出て行かせるか、機密である悪魔払いをするかというところにまで至る。
アリーナがなぜそこまでヴォイキツァに執着するのかぴんとこなかった。そもそも精神を病んでいたということなのだろうか。悪魔払いの儀式のときのヴォイキツァのまなざしがすごい。それだけで信仰が揺らいでいることがわかるのだが、そもそも修道院にアリーナを置くために、彼女こそがそれを望んだのではなかったか。それと、亡くなる前の晩、ヴォイキツァが拘束を解いてアリーナに「逃げて」といったにもかかわらず、なぜ彼女は逃げなかったのか。衰弱していて逃げられなかったのか。
修道院という閉鎖的な場所でのできごととして結果を断罪するのはたやすい。ただ、おそらく最後の砦であるはずの教会ですら、アリーナのような存在を助けることはできないのがルーマニアの現状なのだといういことなのだろう。
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